一般社団法人スポーツ・コンプライアンス教育振興機構

連載コラム

2021.11.08

♯3「岩崎弥太郎とドーピング検査不正」

 NHK大河ドラマ第60作の『青天を衝け』(作/大森美香、主演/吉沢 亮)は、「資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一(1931年,91歳没)の幕末から明治にかけての活躍を描く青春群像劇として、多彩な人物が次々と登場して、波乱万丈の物語が展開されています。
 中村芝翫(しかん)演ずる岩崎弥太郎(1885年,50歳没)も、渋沢と様々な形でかかわる重要な人物の一人として描かれています。 岩崎は、九十九(つくも)商会に始まる三菱財閥の創業者として、今の三菱グループの起源を成しました。「スリーダイヤ」と呼ばれる三菱ロゴマーク。そのプライドが示されるかのように、日常の宣伝・広告や社員バッチなどでも、そのダイヤの光がまぶしい存在であったように思います。
 岩崎家の家訓の一つに「天の道にそむかない」とあるようですが、先般、三菱グループの代表的企業の一つ、今年創業100周年の三菱電機株式会社に品質不良の事件が起き、2021年7月に社長が、同10月に会長が辞任するという大失態が生じました。
 電気制御機器の製造工場の現場で、規格に合わない物を製造しながら、「品質に問題はない」と偽装して、見て見ぬふりをしていたといいます。悪質なことは、こうした不正の事実を隠し続け、工場の現場も経営陣も30年あまりの長い期間放置し続けていたことでしょう。
 これは、大企業における検査の不正、不都合な真実の隠蔽の事案ですが、実はこれと本質は同じとみなされる不正は、スポーツ界でも起きているのです。
 ドーピング検査は、禁止物質を用いて不正に競技能力を高めようとする「ずる」の行為ですが、スポーツの公正さ、公平さを保ち、守るために厳しく検査されます。
グレーな選手をこれに加えて、ドーピング検査が適正に行われることを妨害したり、ごまかしたりする行為もドーピングと同様の扱いを受けます。
 検査に際して、他人の尿を自分の尿検体と偽って提出したり、禁止物質を使っていることをごまかすために利尿剤を使ったり、検出された検体を別の検体にすりかえたり、ドーピング検査の不正の事例は、枚挙に暇(いとま)がありません。
 前述の三菱電機の検査の不正も、スポーツ界のドーピングの検査や自分にとって都合のよいように検査を偽装し、他者や組織に多大な損失を与えると共に、その帰属する企業やスポーツ界の社会的信頼を失う結果を生むのです。
 100年の歴史で積み上げられたスリーダイヤの信頼は、今回の失態により大きく損なわれました。その回復には、どれだけの時間を必要とするのでしょうか。
 スポーツにおいても、元々クリーンな選手を守るために始められたドーピング検査が、ずるをする者によって損なわれることのないように、しっかりと教育・啓発が続けられる必要があります。

 「天の道にそむかない」ことを胸に刻んで。

 

 

 

 

 

執筆:武藤芳照

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