一般社団法人スポーツ・コンプライアンス教育振興機構

スポコン随想

2022.09.30

♯14「東京五輪汚職事件と李下の冠」

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の元理事(みなし公務員)が、大会スポンサーなどから賄賂を受け取っていたとして、8月に東京地検特捜部に逮捕され、そのスポンサーの役員らも贈賄容疑で逮捕され、さらに引続き捜査が続けられ、余談を許さない状況です。
 「東京五輪汚職」「五輪の闇」「五輪マネー」などの言葉が、各報道の中でも大きく映し出され、五輪、スポーツへの信頼が大きく損なわれています。
事件の結末を迎えるまでに、これから、まだまだ数年を要するでしょうが、「スポーツの世界も汚れている」という印象や認識が広がり、真にスポーツを愛している数多くの人々の気持ちを踏みにじったことは間違いないでしょう。
 全国のスポーツの指導者や役員らの多くは、ほとんど手弁当状態のボランティアでスポーツのために日々尽力しているでしょう。
それは、そのスポーツが大好きだから、そのスポーツに関わる先輩たちに大変世話になったから恩返しのつもりでなどの、ごく純粋な精神が基盤にあるからの無償の行為です。
 私自身も、中学、高校、大学で水泳に所属した三流の水泳選手でしたが、おかげで水泳界の数えきれないほど多くの先輩や同輩、後輩らに教えられ、助けられてきた日々があるからこそ、スポーツの普及・振興のためにと、40年以上も長きにわたって活動を続けています。
このスポコン機構もそうした思いの方々のごく純粋な気持ちが強い絆となって運営されているのです。
 今回の東京五輪汚職事件の構図は、時代劇の『水戸黄門』や『大岡越前』『遠山金四郎』などの素材として扱われる時の権力者と悪徳商人(「越後屋お主も悪よのう…」「お代官様ほどでは…」「ワッハッハッハ」の名台詞が定番)の関係に酷似しているように思います。
 昔から「李下(りか)に冠(かんむり)を正(ただ)さず」(『古楽府 君子行』)と言います。
ウリ畑でかがんで靴を履き直すと、ウリを盗んでいるかのように思われる。スモモの木の下で曲がった冠を直そうとするとスモモを盗んでいるかのように思われるから冠を直さないの意。その意から、人の疑いを招くような行動は、避ける方が良いというたとえです。
 こうした古来のたとえ話が、ごく普通に伝承されなくなり、あたり前のマナーやきまりが守られなくなっていることなどが、こうした大事件の基盤にあるように思います。

 

 

 

 

執筆:武藤芳照

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